
言葉を通じて一歩を踏み出すことが始まり
海外にいるかのように異文化交流が盛んだった
- ──LIKIYAさんはお父様がアメリカ人、お母様が日本人とお聞きしましたが、家庭ではどの言語で会話をしていましたか?
- 英語と日本語が交じっていましたね。父はずっと日本に住んでいたので日本語が話せるのですが、子どもとは英語で話したかったみたいで、英語を使っていました。そのおかげで、今もある程度の日常会話だったら英語で話せるのかなと思います。
- ──普段、英語を使う機会はありますか?
- 海外の友人もいるので、そういったときには使います。あと最近は海外で公演することも多いので、英語の方が伝わりやすいシチュエーションでは使っています。
- ──出身地の青森県三沢市は、ほかの地域に比べてアメリカ人が多いエリアですよね。
- 米軍基地があるので、アメリカ人も多く住んでいます。学校にも、僕と同じようなミックスの子がいましたし、環境的にも異文化交流が当たり前の地域なので、英語ともすごく密接でした。アメリカンダイナーのようなお店では英語で話される方がほとんどでしたし、実家の美容院もお客さんの9割が米軍基地の方だったので、母もずっと英語で接客をしていました。だから海外にいるような雰囲気は常にありましたね。
アーティストとして日本文化を伝えたい

- ──幼少期から英語や異文化に囲まれる経験をしてきて、よかったと思うことはありますか?
- 今は、海外から日本に来られる方がすごく多いですし、僕らも海外に行くことが増えていて、グローバルな社会になってきていると思います。僕としてもそこで日本文化を知ってもらいたい気持ちがありますし、アーティストとして文化の発信ができたらなという思いがあるので、英語が話せてよかったなと思いますね。
- ──実際に、英語ができてよかったと思ったシチュエーションはありますか?
- 銭湯が好きなんですが、僕がよく行っている施設がインバウンド的な雰囲気で、海外のお客さんがほとんどなんです。だけど外国の方は入浴の仕方をわかっていないから、サウナのあと汗を流さずに水風呂に入ろうとする人が多いんです。だからそういうときに「一回シャワーを浴びて汗を流してから入るといいよ。そうするとみんなが気持ちよく入れるから」って英語で教えてあげるんです。もちろん海外の方に悪気がないことはわかるのですが、それで気を悪くされる日本の方もいると思うので、少し言葉を交わすだけで伝えられるのなら、それは自分にできることだなと思って。ちょっとしたことなんですけど、それは割とやっていますね(笑)。
- ──素晴らしいことだと思います。大学時代には短期留学の経験もあるそうですね。
- 大学では国際関係の学部に通っていたんですが、半年間の留学プログラムが必修科目に入っていたんです。それで大学2年生のときにアメリカのアリゾナ州に行ったんですが、地元の人だけでなく、世界中の国から学生が集まってきていたので、たくさんの文化を知る機会にもなりました。もちろん日常英語を学び直す機会にもなったので、留学はすごく良かったですね。
- ──留学先は大学の同級生たちと同じ場所だったのでしょうか?
- 留学先はワシントンとアリゾナの2ヶ所があったのですが、僕が行ったアリゾナはちょっとレベルの高いクラスで、人数も20人くらいしか行けなかったんです。知り合いがたくさんいるとそこで過ごしてしまうことが多いので、僕としては少人数で良かったなと思います。
- ──英語を勉強していても日本人が多い環境では、なかなか一歩を踏み出せない人も多いと思います。
- 日本の人は「発音が良くないといけない」って、不安に思ってしまう方が多いのかなと思います。でも、海外の方と話していると、実際はそこまで発音を気にしなくても理解してくれる人は多いので、あまり考えすぎず、それこそ日本語交じりでも「話してみたいな」って気持ちでフランクに話し出せればいいのかなと思います。
- ──「EXILE PERFORMER BATTLE AUDITION」を受けようと思ったきっかけは何ですか?
- 大学生のときに兄のELLYが所属する三代目J SOUL BROTHERSのライブを観たとき、「自分もこのステージに立ちたい」と思ったんです。中学、高校時代からダンスは好きでやっていたんですけど、明確にのめり込んでいったのは、高校3年生のときでした。それまではずっとバスケットボールに熱中していて、大学受験に向けて部活を卒業したあとに、次に挑戦したいと思ったのがダンスでした。
- ──私もアメリカでは、よくラインダンスをしていました(笑)。でも、日本にはラインダンスをする場所がほとんどないですよね。
- たしかにそうですね。そういう意味でもやっぱりアメリカの方がダンスは身近だと思います。僕の地元でもクラブにいくとダンスをしているアメリカの人がすごく多かったです。
相手の国の文化を知り尊重することが大切

- ──現在は、THE RAMPAGE として日本はもちろん、海外進出も精力的に行っていますが、海外での活動のときに意識していることはありますか?
- やはり日本とは別の文化があるので、それを知ることが大事かなと思います。例えば、タイでは人の頭を触るのは失礼にあたるとか、そういうことを学ぶのはすごく大切だと思います。もちろん言語も大事ですが、それ以上に僕は文化を尊重したい。僕たちも、海外の方に対して、「日本ではこうしてほしいな」っていう思いはどうしてもあるので。
- ──銭湯のマナーだったりですね(笑)。
- そうですね。それに近いものがあるかもしれません(笑)。
- ──海外でのお仕事で、ファンやスタッフの方と英語でコミュニケーションをとることもありますか?
- ありますね。通訳さんもいますが、直接話した方が早いこともあって、そういうときは僕がマネージャーに「今、こういう話をしているよ」って通訳しています。
- ──THE RAMPAGEの他のメンバーの語学力はいかがですか?
- ここ数年、海外に行く機会が多くなっていて、語学を学ぶメンバーが増えています。英語はもちろん、中国語、タイ語、どこに行っても通用するようにみんなで学んでいます。
- ──メンバー間で、英語で会話をすることはありますか?
- 僕らの間では、「海外にいるときは英語で喋る」みたいな気持ちがありますね。間に海外の人たちが入って話すこともあるので、なるべく日本語は使わないようにしています。
- ──LIKIYAさんは英語以外に、他の言語を学びたい気持ちはありますか?
- まだ挑戦はできていないですけど、ポルトガル語を勉強したいです。僕、ブラジル料理のシュラスコが大好きで、いつかブラジルに行ってみたいんです。だけど僕の中で、南米はあまり英語が伝わらないようなイメージがあるので、覚えたいですね。
- ──海外で活動していて「日本や日本人とは違うな」といった、カルチャーショックを受けたことはありますか?
- カルチャーショックとまではいかないけど、海外の人は「自分ファースト」のイメージがありますね。譲り合いの精神は素敵な文化だけど、日本人は周りの目を気にすることが多いのかなって。海外に行くと本当にそれぞれ自由に暮らしているなと感じるんですよね。
- ──私も日本に来てから、アメリカに比べて電車やエレベーターでみんなが静かなことに驚きました。誰も大きな声で話さないですよね。
- 僕も仕事柄、見られ方を気にしたりもするので、海外に行ったときに解放できるのはいいなと思います。ああいう自由な雰囲気は好きですね。
- ──2020年からは派生ユニットのMA55IVE THE RAMPAGEで、ダンスだけでなくラップもされていますね。英語詞を歌うときに意識していることはありますか?
- 日本で活動しているので、難しい英語表現はあまり使わないようにしています。かつ、日常的に耳にするような聞き馴染みのある言葉を意識して使っていますね。
- ──日本語でラップをするのと、英語でラップをするのは違いますか?
- 違いますね。英語の方が発音の数が多いので、曲にハメやすいんですよ。だから、歌詞を考えていると、気づいたら全部英語になっていたみたいなこともあって(笑)。さすがに全編英語というわけにもいかないので、英語で作ってからここは日本語にしよう、みたいなことをよくしています。
いろんな国の人が共存する世界で、お互いを理解し合うためにも言語はとても大切まずは言葉を通じて一歩踏み出そう
海外進出を積極的に行いファンの気持ちに応えたい
- ──面白いですね。現在2つのユニットで活動されていますが、今後の夢や目標はありますか?
- MA55IVEも海外進出を積極的にしていきたいですね。THE RAMPAGEでは、今はアジア圏に公演に行かせていただいているのですが、SNSでも「うちの国にも来て」とお声をいただくことが多いので、ヨーロッパやアメリカなど、いろんな地域に足を運んで、そういう方々の気持ちに応えたいなっていう気持ちがあります。
- ──THE RAMPAGEは、開催中の大阪・関西万博でスペシャルサポーターを務められていますが、万博に期待していることはありますか?
- 海外からたくさんの方が来られると思うので、日本の良さをもっと知ってもらいたいですね。もちろん、さまざまな日本の技術を世界に広める大きなチャンスでもありますが、異文化交流の場としても、すごく良い機会だと感じています。ざっくりとした日本のイメージというのはあるかもしれないけど、実際に来てみると「あ、こういうところなんだ」って、新しい発見があると思うので、いろいろな日本の良さを感じてもらえたらうれしいです。
- ──万博のパビリオンで、気になるものはありますか?
- やっぱり日本館ですね。生ゴミから持続可能なエネルギーを生み出せる設備があると聞いたので、それが世界的に実用化されれば、日本のみならず世界の大気汚染も改善できると思うので、期待しています。あとは会場内にサウナ施設があると聞いたので、それも気になっています(笑)。
- ──それは体験するしかないですね(笑)。LIKIYAさんが思う、日本語以外の言語を話せることや、海外の文化に触れることの魅力を教えてください。
- ひとつの地球ではありますが、いろんな方が国をまたいで共存する世界でもあるので、やっぱりお互いを理解し合うためには、言語はとても大切です。まずは言葉を通じて一歩を踏み出すことが始まりだと思うので、言語を学ぶことは、お互いの文化を共有する上でも、とても大切なことなんじゃないかと思います。
- ──最後に、ECCへ通っている生徒のみなさんに、メッセージをお願いします。
- 今は、海外から日本に来る方、そして日本から海外に出る方がたくさんいると思いますし、外国語を学んでおいて損はありません。日本からも、どんどん海外に出て、いろんな場所で活躍できるような存在が増えてほしいと思っているので、ぜひ外国語を勉強して、いろんな場所でたくさんの友達を作って、人生を豊かにしてほしいです。

LIKIYA THE RAMPAGE
1990年生まれ。青森県三沢市出身。総勢16名からなるTHE RAMPAGEのパフォーマー兼、リーダーを務め、2017年に1st SINGLE「Lightning」でメジャーデビュー。兄は三代目JSOUL BROTHERSのELLY。現在は、グループ派生ユニット、MA55IVETHE RAMPAGEとしても活動し、ライブやTV番組、ラジオのメインパーソナリティーなど、多方面で活躍。
Interviewer
Ashley Peters
アシュリー・ピーターズ
ECC外語学院の外国人講師。2月に来日したばかりで、街中での日本人の静かさなど、驚くことも多いとか。自身も母国でのダンス経験があり、LIKIYAさんとはダンスの話で盛り上がっていました。