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世界の仲間とまた会うために日々の学びは欠かせない!

ボキャブラリーを増やすことが今のテーマ

──NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』では、フライトシーンの英語の発音が素晴らしかったです。
小学校の頃から英語が好きで勉強していたのですが、大人になっても身についてないことがすごく悔しくて。仕事にもつながることだと思い、本格的に勉強を始めました。基本的に独学です。
──具体的にはどのような学習をしているのでしょうか?
発音に関しては先生に教えていただいています。私は机で勉強をするのが苦手なタイプなので、洋画のスクリプト(台本)を購入して、同じスピードで英語のセリフをしゃべったり、一部分を丸々暗記してみたり、独自の方法で勉強しています。
──それは、いい方法だと思います。映画やテレビ番組は、特定のフレーズが文脈のなかでどのように使用されているか理解をするのに非常に役立ちますし、より自然な英語を身につけることができると思います。
ジェームズ・コーデンというイギリスの俳優の方がMCをされている『レイト×2ショーwithジェームズ・コーデン』(CBS)という番組が大好きで、YouTubeの公式チャンネルでよく観ています。
──私も『はじめてのおつかい』(日本テレビ)で、日本語の勉強をしました。子どもたちはとても簡単な言葉で話すので、理解しやすいんですよね(笑)。英語の学習で苦労したことはありますか?
自分が使いやすい言葉に頼ってしまうことが多いので、ボキャブラリーを増やすことが今のテーマです。いい方法はありますか?
──子どもが母語で語彙を学ぶ方法の一つは、本を読むことですよね。外国語を学ぶときも同じで、読むことが大切です。こう言うと、みなさん新聞や歴史の本などを読まなければいけないと考えるかもしれませんが、好きなものでいいんです。小説に興味があれば小説でいいし、雑誌に興味があれば雑誌。まずは読書を楽しんでください。読んで、そして毎日使うことが大事です。
毎日継続するのは大変ですが、頑張ってみます。
──ちょっとした日記を英語で書いたり、Vlog(ビデオブログ)のようなものでもいいんです。インプットだけでなく、少しずつでいいので毎日アウトプットしていくといいと思いますよ。山崎さんはどんなときに「英語が上達した」と感じますか?
TOEIC®L&R TESTで高い点数が取れたときや、コミュニケーションがきちんと取れたときに成果を感じます。それと、ネイティブの方に「分かりやすいよ」と褒めていただけたときです。
──とてもお上手だと思いますよ。非常に明確で、ニュートラルな発音がとてもすてきです。私の日本語よりもずっと上手ですね(笑)。

語学に限らず自分がこれまでやってきたことや努力したことは必ず自分に返ってくる

通訳を介さずに会話できたとき成長を実感できた

──プライベートで英語を使う機会はありますか?
先日、ドラマの撮影をしていたら、通りかかった外国の方に英語で道を聞かれました。
──旅行に行くことはあまりないですか?
最近タイに行きました。タイ語が主流でしたが、看板や標識を見るのに英語が役立ちました。
──山崎さんは海外スターのインタビュアーを務めることもあるそうですが、「英語を身につけておいてよかった」と思った瞬間はありますか?
ハリウッドスターへのインタビューは、時間や質問の数に厳しい制約がある場合が多くて…。なので、通訳を介さずに直接話すことができたときに、学んでおいてよかったと思いました。
──海外での仕事を意識するようになったきっかけはありますか?
このお仕事を始める前は海外に行ったことがなかったのですが、お仕事で行かせていただけるようになってから自分の世界が広がり、もっといろんな国の方とコミュニケーションが取りたいと思うようになりました。ハリウッドの映画スタジオの取材をしたり、ハリウッドスターにインタビューをした経験も大きかったと思います。
──英語を使った仕事だと、映画『モンスターハンター』(2021年日本公開)への出演がありますね。出演に至った経緯は?
ポール・W・S・アンダーソン監督が日本人のキャストを探しているということで、日本からビデオ通話でオーディションを受けさせていただきました。海外作品に参加したことがなかったため、どんなオーディションで、どんなところを見られているのかが全く分からなくて。ダメで当たり前だと思って、とにかく自分の熱意を伝えようと思いました。「私はこのプロジェクトにとてもパッションを持っています」といったことを英語でアピールしました。オーディションの最後にポールが「南アフリカで待っているよ」と言ってくれたんです。
──どんな気持ちでしたか?
南アフリカで撮影をしたのですが、現地に着くまでは信じられなくて。もしかしたら「急になくなった」と言われちゃうかも、とドキドキしながら毎日過ごしていました。
──撮影現場で思い出に残っているエピソードを教えてください。
主演のミラ(・ジョボビッチ)はとても温かくて、みんなのお母さんみたいな方でした。いろんな国からキャストが集まっていましたが、チームのみんなにすごく愛情を持って接してくれて。撮影の合間にちょっとしたゲームをしたりして和ませてくれました。また、南アフリカは日中と夜の寒暖差がすごくあったのですが、極寒の撮影のときにミラは腕が出た衣装を着ていて。私は首元まで襟があってファーもついている衣装だったので、「紘菜の衣装は暖かそうね。交換しない?(笑)」など、よく声をかけてくれました。
──ミラ・ジョボビッチさんはまさにハリウッドスターですが、共演するにあたってナーバスになることはなかったですか?
現地ではキャストやチームのみんなが、日本から来た1人の俳優としてリスペクトを持って接してくださっていたので、楽しもうという気持ちの方が大きかったです。
──実際に、撮影は楽しめましたか?
最初は緊張していたのですが、帰国するときにはみんなと泣いてお別れをするくらい仲良くなることができました。とても大切な思い出です。

ハリウッドという場所は私にとって「宇宙みたいなところ」だった

─監督からはどのような指示を受けていたのでしょうか。
ポールは写真や映像を見せながらとても分かりやすく演出をしてくださいました。もちろん、実際の撮影現場にモンスターはいないので、モンスターがどういう風に動いているかを身振り手振りを交えて熱意を持って説明してくださって。とても、愛情深くて温かい監督でした。
──現場では英語で問題なくコミュニケーションが取れましたか?
監督と1対1でお話しさせていただくときは、コミュニケーションがきちんと取れたのですが、全員に向けての遠くからの指示だったり、専門的な言葉が出てきたりしたときは聞き落としてしまうこともあって。私は、ヤニック(・シューマン)というドイツ人の俳優の方と一緒にいることが多かったのですが、私が聞き落としてしまったときは、ヤニックがこっそり助けてくれていました。
──ハリウッド映画への出演は、山崎さんに何をもたらしましたか?
ハリウッドという場所は、私にとって「宇宙みたいなところ」だと思っていました。限られた人間にしか行けない、自分には届かない場所だって。それが、同じ地球にあるところだと考えられるようになりました。挑戦する場として捉えることができるようになり、またそこに行きたいという新しい夢につながりました。言語は使わなければ風化してしまうものだと思うので、英語の勉強は続けています。
英語を勉強している中で、初対面の外国の方と、気後れしてしまってうまくコミュニケーションが取れずに落ち込んでしまったという経験を持つ方は、多いんじゃないかなと思います。でも、日本語でも初対面の方といきなりたくさん話すことは難しいじゃないですか。「まあ、母国語でもできないことだし、いっか」と、うまく言い訳をして、あまり落ち込まないようにしています。
──今は海外の作品に日本人俳優が起用される機会も増えて、俳優として海外に向けたチャレンジがしやすい環境だと思います。再び海外作品に出演するチャンスが来たらどうしますか?
もちろん、また何度でも挑戦していきたいです。ミラや、『モンハン』チームのみんなとも、また絶対に会いたいとずっと思っています。あと、いつか『レイト×2ショーwithジェームズ・コーデン』に出て、ジェームズ・コーデンに会うのも夢の一つです!
──ECCで学ぶ生徒にとって、山崎さんのように海外で活躍することは一つの目標だと思います。生徒のみなさんに、エールをいただけますか?
語学に限らず、自分がこれまでやってきたことや努力したことは、必ず自分に返ってくると信じています。私も海外で英語が通じなかったり、聞き取ってもらえなかったり、悔しい思いや恥ずかしい思いをたくさんしてきました。なので勉強をされている方の苦悩がよく分かります。学んだことは絶対に無駄にならないと思うので、自分を信じてお互いに英語の勉強を頑張っていけたらと思います。

山崎紘菜

1994年4月25日生まれ。千葉県出身。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションにて審査員特別賞を受賞。12年俳優デビュー。デビュー以来映画・ドラマほか、モデルやナレーションなどでも幅広く活躍。20年米公開の映画『モンスターハンター』ではハリウッドデビューを果たす。近年の主な出演作として映画『ブレイブ-群青戦記-』(21)、『LOVE LIFE』(22) 、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(22)、土ドラ『三千円の使いかた』(23・東海テレビ)など。

Interviewer
Edward Chynoweth

ECC外語学院の外国人講師の人事を担当。教壇に立った経験もあるため、インタビュー中、山崎さんに「英語を上達させるには?」と質問され、ていねいにレクチャーする一幕もあった。

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