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何かに頼ったりせずハートで触れ合うことが大切

試験の失敗で基礎学習が大切だと感じた

──学生時代の得意科目が英語だったそうですね。
好きでした。とはいっても、頑張って文法や単語を覚えていたわけではなく、感覚的にできていたことが楽しかったんです。センター試験も特に対策しないで180点くらい取れてしまったんです。ただ、勉強していなかったので波があって大学受験の本番は140点くらいでした(笑)。
──現在のご自身の英語力を分析するとどのくらいだと思いますか?
ゼロに等しいです。ずっと感覚でやってきたから、基礎がまったくないんです。主語の次に述語がくる感じとかは、文を読めばスッと入ってきたので英語自体は向いていたのかもしれないけれど、難関私立大学の問題は全然解けなかったですし、センター試験の本番で間違えたときに、やはり基礎は大事だと思いました。
──初めて英語に触れたのは?
中学の教科書です。中学時代は全体的に勉強を頑張っていて、塾にも通っていたので、人よりも英語に触れる機会は多かったかもしれないです。その土台があったから英語が苦じゃなくて、ずっと楽しく学べたのかもしれないです。
──中学時代には、英語のスピーチコンテストにも参加したと聞きました。
市の英語スピーチコンテストのオーディションがあって、部活をサボりたいから、当時やっていたバスケ部のみんなで受けたんです。そうしたら、審査のときだけすごく発音が良かったみたいで、僕だけ受かってしまい…。ただ、コンテストに参加しても部活は休めず、どちらの練習もすることになり、てんてこ舞いな夏休みになってしまいました(笑)。
──当時は、発音にも自信があったんですか?
まったくなかったです。なんで選ばれたんだろうという思いがあるから、つらいなという気持ちが先に立っていました。スピーチコンテストを受けたきっかけもよこしまな気持ちだったから、前向きにはなれなかったです。学校のテストや試験に向けてなら「1位とるぞ!」という気持ちで、前向きにやれていたんですけど。
──スピーチコンテストに向けてどんなことをしましたか?
ひたすらスピーチをカセットテープに録音して聴いて…反復、反復でした。ここの部分はつなげて読むんだよとか先生に教わりながら。ただ、僕は同じことをひたすら繰り返すことが苦手で、これなら海外で何年か生活をした方が英語はできるようになるだろうなと思いました。これは今の考えですけれど、英語に関しては耳や感覚で吸収していく方が、自分には向いているんじゃないかと思います。
──英語はやっぱり聞いて話すことの繰り返しが大切ですよね。学生時代は英語をどう勉強していましたか?
テキストを読んで、ひたすら問題を解いていました。それこそ中学時代は同じことの反復で、例文から英語の使い方がどんどん自分の中に入ってきたんです。でも、高校時代はまったく英語の勉強をしていなくて、本当に感覚勝負でした。
──それで身についたのは、中学時代にしっかり基礎を作れていたことが大きいかもしれませんね。
まさに、中学時代の財産でした(笑)。数学もだけれど、将来的に英語を使うなんて、当時はまったく考えていなかったので。

初めての海外で心を通わせる楽しさを知った

──初めて海外に行ったのは、2020年5月16日に放送された『チョイ住みinバルセロナ』(NHK BSプレミアム)だったそうですね。
そのときに、英語で生活した方が覚えるのは早いなって思ったんです。ある作品で関西弁を練習したことがあったんですが、そのときも関西弁を話す人と一緒に過ごして、耳と感覚で詰めこんでできるようになったんです。バルセロナでは英語を使わなければ何もできなかったし、ここで英語が使えたらすごく楽しいだろうなと思いました。
──バルセロナはスペイン語とカタルーニャ語が公用語ですが、英語を使う機会も多かったですか?
やっぱり英語で話すと通じるんです。中学時代に身につけた本当に基礎的な言い回しでなんとか気持ちを伝えたんですが、すごく楽しかったです。自分と違う場所で育った異文化の人たちと、心を通わせようとすることがすごく魅力的でした。
──番組では、ご近所の老夫婦の方と仲良くなっていましたね。
その老夫婦の方たちはスペイン語しか話せなくて、僕のつたない英語も通じないから、はじめはお互いに何を言っているか分からなかったんです。でも、いつしかなんとなく通じ合えてきて、カメラが回ってないところで最後に「もう行っちゃうのね」と奥さんが泣いちゃうくらい親密になれました。言葉が分からなくても、ちゃんと自分の想いを伝えることができたのはうれしかったですね。
──音声翻訳アプリなどは使わなかったんですか?
使いましたが、アプリを通してだと会話をしてない感覚になっちゃうんです。相手を待たせている時間も不自然だし、人と人との間に機械が介入してしまうと、やっぱりハートの触れ合いではなくなってしまうなと。アプリは便利だし助けられもしたけれど、ジェスチャーや身振り手振りでコミュニケーションをとった方が楽しいと思いました。番組では、プロレスラーの蝶野(正洋)さんと共同生活を送ったんですが、蝶野さんは奥様がドイツのご出身で少しだけ英語が話せるんです。とはいっても、僕より少しだけできるくらいで2人ともつたなかったんですが、蝶野さんは堂々と話しかけにいくんです。僕もその姿に学びました。一番大切なのは心を通わせることだから、最初は何とか通じればいいんです。恥ずかしいとか、馬鹿にされるんじゃないかって思うかもしれないけれど、一生懸命伝えようとすれば、相手にもそれが伝わると思うんです。コミュニケーションをとっていく中で楽しさがどんどん生まれて、もっと知りたい、もっとちゃんと話したいと感じていくんだなと思いました。
──語学の学習には気持ちが伝わる喜びや楽しさがありますからね。
そこですよね。いつか英語をちゃんと勉強したいって思っていたけれど、経験したことでその気持ちがより強くなりました。ただ、今は自分の人間的な部分や俳優としての成長のために注力が必要で、時間や心に余裕がまったくないんです…。
──今は俳優のお仕事に全力投球なんですね。
いつでもそうです!目の前にやるべきことがあって、それに200%の力を注ぎたいというのが僕の考え方です。あまり器用じゃないから多くのことを同時にできなくて、「いつか、何かのために」という考えはできないんです。例えば、大河ドラマ『どうする家康』(NHK)の撮影で初めて馬に乗ることになったんですが、作品という入り口があるからこそ、もっと極めなきゃって一生懸命練習ができるし、それが役にも反映されていくんです。英語を話せたらワクワクするなと思うけれど、今の僕だと使う機会もないし、アウトプットの方法も分からないからまだいいかなって。でも、英語を勉強したいという気持ちは頭の片隅にあるという不思議な状況です(笑)。

コミュニケーションをとることで海外の人たちがより近い存在になると思います

英語を学べる環境を楽しんでほしい

──最近は動画配信サービスが増えて、海外で日本の作品が見られる機会も多くなり、海外の作品にもチャレンジしやすい時代になったと思います。もし、海外作品からオファーが来たら挑戦してみたいですか?
それはもちろんやりたいです。でも、ゼロからの挑戦になりますし、ちゃんと自分と向き合いたいので、そのためにはやっぱり時間が必要です。俳優として海外作品に出ることがいいかどうかについては、いろんな意見や考え方があると思いますが、そういう機会があれば、英語が必要になるし、学ぶチャンスになるはずです。そう考えると、いろんな部分で選択肢は以前よりも広がっていると思います。
──海外のファンからメッセージが届くこともあるそうですが、コミュニケーションをとってみたいと思いますか?
自分の言葉で何か伝えることができたらなとは思います。スペインで感じたことですが、自分と環境や文化が違う人たちとコミュニケーションがとれると「外国人」という距離のある存在でなく、もう少し近いものになっていくんです。その感覚が楽しかったり、うれしかったりするのでそれは感じたいです。
──1月からは月曜よる10時のフジテレビのドラマ『罠の戦争』への出演が控えています。杉野さんが演じる役どころについて聞かせてください。
僕が演じるのはど新人の議員秘書です。心優しい青年なんですが、純粋ゆえに気持ちが膨らみやすく、自分の過去の出来事からその議員への復讐心を抱いています。政治の世界を舞台にしたドラマですが、いろんな世代の方に楽しんでいただけるすごく濃厚な作品になっていますので、ぜひ観ていただきたいです。
──最後に、ECCで語学学習中のみなさんにエールをいただけますか?
何かを純粋に学べることっていいなと思うんです。俳優の仕事をしていると「どうにかしなきゃいけない」と力が入って、楽しめないことが多いんです。僕が学生時代にECCに通っていたら、「試験でいい点とってやる」とか「なにかに使うために絶対にマスターしなきゃ」って考えていたと思います。でも、それって純粋に楽しんでいないから、もったいないと思うんです。今だったら、きっと僕も「海外に行ったときに使えたらいいな」と素直な気持ちで楽しめるような気がします。だから、何もしていない僕が言うのもおこがましいですが、学べる環境にいることを楽しんでもらいたいなと思います。

杉野遥亮

1995年生まれ。2015年FINEBOYS専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、芸能界デビュー。2017年には映画『キセキ-あの日のソビト-』で俳優デビュー。近年では、映画、ドラマ、舞台に幅広く活躍中。2023年1月はフジテレビ月曜よる10時の『罠の戦争』の出演が控えている。

Interviewer
Allison Lai

ECC 外語学院教務トレーナー。カナダ・トロント出身。杉野さんと出身地のトロントについて話したり、英語学習のポイントについてお話しする一幕もありました。

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